人口比1000人あたりの医師数は先進国で最低基準の日本
数年前から「○×市民病院が産婦人科の分娩を休止」、「地域の2病院を統廃合」などのニュースをよく見るようになりました。
この記事を書いている2011年4月には、栃木県の小山市民病院が、後任の常勤医師を確保できないため、産婦人科の産科診療と、眼科診療を休止すると発表したばかりです。
診療科の休止や病院の統廃合の多くは、医師不足が関係しています。勤務医が減ると、残った医師の負担が増え、その苛酷な労働環境に耐え切れなくなった医師が辞めてしまい、さらに医師が不足するというスパイラルに陥ってしまいます。
辞めた医師もどこかで働くことになるのですが、労働条件や待遇などの差によって、「医師の偏在」に拍車がかかっています。地方から都市部へ、病院から診療所へ、公立から民間へ。診療科による偏在も大きく、産科、小児科、麻酔科、救急などで医師不足が深刻になっています。
2004年に導入された卒後臨床研修制度で新人医師が研修先を自由に選べるようになったことや、女性医師の増加に伴う出産・育児と仕事の両立問題も絡んでいます。
厚生労働省によると、医師は2008年末で医療施設や介護施設で診療に従事している医師の数は約27万5000人となっており、人口1000人あたりに2.15人となっています。
主に先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の統計データによると、この数字は全30ヶ国中で27位。OECD平均(3.1人)にするには約12万人もの医師を増やす必要があります。
一方、人口当たりの病院のベッド数は群を抜いてトップです。看護師の数は平均です。このため、ベッドあたりの人数で見ると、医師数は圧倒的に少なく、看護師の数も少なくなります。日本の医療現場が諸外国に比べて、手薄な体制であることが分かります。
医師の仕事の範囲は国によって差がありますが、他国に比べて人数が少ないのは確かす。OECDは原因を「政府が医学部入学定員を制限しているため」と指摘しています。
医学部の入学定員は1979年から医学部のない県を解消する政策が進められ、81年には8280人に増加しました。しかし、1986年に旧厚生省の検討会が「2025年には医師の1割が過剰になる」と試算したのを受けて、定員削減に転換しました。
医師が増えると医療費も増えて財政を圧迫するという、当時の厚生省幹部が唱えた「医療費亡国論」も影響したようです。競争相手を増やしたくない日本医師会も抑制に産生し、医学部の入学定員は徐々に減って2003~2007年には7625人に抑えられてしまいました。
ところが、医師不足が深刻になったため、再び方針を転換。2009年度は過去最大の8486人、2010年度はさらに増えて8846人となりました。厚生労働省の検討会は、将来的に定員を50%増(約1万2000人)にすべきだ、という報告書を提出しています。
医師の需要が増える最大の要因は、医学の進歩でしょう。患者数が変わらなくても、さまざまな検査や治療の手段が増え、患者への説明を含めて作業量は増大します。
医師不足の対処には、絶対数の確保と偏在解消の両方が必要です。しかし一人前の医師の要請には卒後研修、専門研修を含めて10年以上かかるため、効果はすぐには表れず、偏在解消の対策も一筋縄ではいかないのが現状です。