適正な当直料を支払う医療機関は少ないのが現状です

労働基準法が実質的に無視されるケースが多い

いわゆる医師の「当直」は、労働基準法が定める「宿直」(常態でほとんど労働する必要のない勤務)と通常勤務の時間外労働が混同されて使われているのが現状です。

救急告示病院などの当直は、重傷者の治療が前提となるため、時間外労働となるのが一般的です。「宿直」の場合の賃金は定額の宿直手当となりますが、「時間外労働」の場合には、1時間あたりの通常の賃金に割増賃金を上乗せした額を、仮睡眠時間を含む全ての当直時間に対して支払う必要があります。

時間外労働の賃金計算の基礎となるのは、基本給はもちろん医師手当てなどの諸手当も含まれます(ただし、家族手当などの勤務と関係ないものは除く)。この賃金を時給に換算したものが、時間外労働の賃金の基礎となります。

時間外労働の賃金は、基礎となる賃金に25%以上を割り増しにしたものです。さらに、夜の22時から翌朝の5時までは、深夜の割り増し25%以上が上乗せされます。

例えば、日中の時給が4000円の医師の場合、時間外賃金は4000円に最低でも25%(1000円)を上乗せした5000円以上でなければなりません。さらに、深夜は25%(25%+25%=50%)を上乗せした6000円が最低の時給になります。

したがって、夕方5時から翌朝8時まで当直を行えば、15時間が時間外労働となり、そのうち7時間は深夜労働となるため、最低でも5000円×8時間、6000円×7時間で、合計8万2000円以上が適正な当直料となります。

これは、労働基準法で定められた最低の賃金ですので、これを下回る当直手当は労働基準法違反となり、その差額は不払い賃金となります。なお、不払い分は2年前にさかのぼって請求する権利があります。

2010年4月からは、長時間労働の抑制を目的とした法改正により、月60時間を超える時間外労働に関しては、さらに25%以上の割増賃金を払うことが法律で定められています。

しかし、上記の計算が正しく適用されている医療機関はほとんどないのが実情で、多くの勤務医が不当に安い時給で働いています。最近では当直を時間外労働と認めない県立奈良病院に対して、産科医が裁判を起こして勝訴したことも記憶に新しいところです。